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大阪府箕面市のシェア・フラット「田田庵」のブログ。

国民投票法改定へ糾弾はアンフェアだ

日本国憲法の改正手続に関する法律*1の一部を改正する法律案」*2美味しんぼ」の鼻血騒動の異様なほどの騒ぎの裏で 通過したことを糾弾するのは、いささかアンフェアなように思える。

上掲記事では、最低投票率が定められていないという問題が指摘されている*3。これはもちろん、問題とされるべき点ではあるが、改定*4前から変更のない点である*5。この点については、次の改定案として、早期に可決されるべく働きかけることが重要なのであり、今回の改定案に盛り込まれなかったことは、たしかに問題ではあるが、しかし、そのことをもってしても、騒動に乗じて、いわば国民を欺くようなかたちで採決がなされたのだ、と喧伝することは、さすがに公正さを欠いており、現行の国民投票法に疑義を投げかける立場への信頼性を損なうことにもなりかねない、まずいやり方であると思われる。

また、この改定により、憲法改正の発議から国民投票までの期間、公務員[……]は、公務員の[……]政治的行為[……]を禁止する他の法令の規定[……]にかかわらず、国会が憲法改正を発議した日から国民投票の期日までの間、国民投票運動(憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為をいう[……])及び憲法改正に関する意見の表明をすることができるという条文(百条の 2)が盛り込まれたことについては、肯定的に評価するのが適当だと考えられる*6。このような点を無視して、「憲法改悪につながりうる法律に関する議案が通過した」ということのみをもって、なんでもかんでも反対するようなやり方は、困難な現状をすこしでもましな方向へもっていく道さえ閉ざしかねない危険なやり方である、とすら云えるだろう。

なお、国民投票法によって改憲への道が開かれること自体については、改憲が困難であることによって憲法の過剰な拡大解釈が横行するような事態を防ぐものとして、使い方次第では有効な働きをなしうるものであり、全面的に否定すべきものではないと考えている*7

(ユウタ 3.21)

*1:平成 19 年法律第 51 号、通称「国民投票法」.

*2:平成 26 年法律第 75 号.

*3:抱き合わせ投票については、より詳しく検討する必要があると考えられるので、ここでは保留する。

*4:「改正」や「改悪」よりも、中立的な「改定」という言葉を使ったほうが、より多様で開かれた議論につながると考える。

*5:上掲記事の書き方だと、今回新たに生じた問題であると誤解されかねない。また、18歳に引き下げられたにもかかわらず、最低投票率が定められていないということが問題だと述べているようにもとれるが、そのような意見であれば、あまり納得できるものではない。

*6:もちろん、このようなリベラルな顔をした案を盛り込むことによって、ほかの問題点を覆い隠そうとすることは、しばしば採られる方法なので、十分に注意する必要があるが。

*7:現行法には、上述の最低投票率が定められていない点をはじめとし、いくつか看過しがたい問題点があるが。